象とアリに同時にフォーカスを合わせる


新年のご挨拶きっかけで
今日はディテールの話をちょっと書いてみようかと。



もはやどちらの実家も
半日で行って帰って来られる距離になったので
お正月は久々に夫婦で2人並んで図面を書いていたりしていました。


オットは私より実務のキャリアが長い上に
こうしたらこうするみたいな型が身についてしまっているので
サクサク図面を描きます。


一方、私はといえば
それそのまま聞いちゃうと落としどころ見失うよ、
というクライアントの要望を
どうかみくだいて形に落とし込んだらよいかと悩んで決まらないところを
描いちゃー消し、また描いちゃー消しというところが非常に多く。


特に、私はディテールを「事務所らしいもの」というより
「そのプロジェクトらしいもの」にしたいという思いが強く
今取りかかっているものをどう具体化したらいいか
七転八倒しながら取り組む日々です。


特に今回のものはすっごく難しくて何回もやり直しています。


イメージとしてはぼやーんとあるのです。


今回の住宅(一部店舗)はなるべく
ただの光の濃淡で場所が出来ているような感じにしたい。


でも当然異種のものとものがぶつかる接点にはディテールが出てきます。
それをオットがサクサクと
しかもかなりエッジ(特に壁)をパッキリした形で図面を描いたものだから
いやいやそうじゃなくって、、の話し合いを一巡したあげく
その日は一日かけて描いた図面をすべてご破算にしました。


ぼやーんとしたイメージから素材を選び
それにディテールを肉付けするのはすごく難しいです。


理想論としては、最終的にディテールや素材を感じない
大らかな仕上がりにしたい。
そのためには、ある種の抜け感を頭に置いて
でもきっちり練らないといけない。


ある種の雑然とした感じはありつつも
よく掃除され手入れされた場が気持ちがよいように。



以前、男友達と原田知世について語っていたとき
彼は原田知世の魅力を
「白」を超越して「無色透明」なところだと語っていました。
でもにおいはあるんだと。
風だか草原だかの。


目指すディテールのことを考えていて
そんなことをふっと思い出しました。



はたまた学生のとき先生が言ってた
「象とアリに同時にフォーカスを合わせる
あるいは象行ってアリ行ってみたいなやり取りを永遠と繰り替えすこと」
の話のことなんかも。


冷静に考えて、象と蟻に同時にフォーカス合わせると
単純に目が寄りすぎちゃうので
「あるいは」のところは「すなわち」の意味が正解で
象と蟻をなるべくたくさん往復するということなんでしょう。



また別の問題として
こうした地道かつ
端から見れば自己満足以外の何ものにも見えないことを
どうやってコストと時間とに
折り合いをつけてやるかということもあります。


・・・でも本当は自己満足なんかじゃないんですけどね。
ディテールがそれぞれあっちゃ向いてこっちゃ向いてみたいな場は
本当に落ち着かないし
キメキメ過ぎて「どや?顔」のディテールでできた場は
また全然違う意味でまったく落ち着かないものです。


オットとあれこれ話していたときは
「分からん分からん」を連発しつつも
話し合うことで、そして二三日経ってみて
はじめてぼんやり見えてきたような気がします。



とにかく形にしてみることで
ある「ゆるさ」をそれでも輪郭にしてみること。


これを2011年の大きなテーマとしてみます。